U.判例の調べ方(A) 〜 判決文そのもの
 

1)判例集と判例雑誌

 「判例」とは、個々の訴訟について裁判所が下した判断(判決)のことです。その中から従来の解釈を変更した場合など重要な意味を持つ判例が判例集(「最高裁判所民事判例集」など)に登載されます。膨大な量にのぼる判決のすべてが収録されるわけではなく、また刊行までにかなりのタイムラグがあるため、判例を調べるには判例雑誌(「判例タイムズ」、「判例時報」、「金融商事判例」など)を併用する必要があります。判例雑誌には判例集より早く判例が収録され、また、下級審の判例も数多く収められており、解説が付されていることが多いので便利です。

  判例を検索するときは、タイムラグ(時間のズレ)を考慮しなければなりません。判決の言い渡しから判例集の搭載まで、およそ半年から1年以上もかかり、判例雑誌に収録される場合でも数カ月はかかります。判例の検索のためには「法律判例文献情報」など便利な検索資料がたくさん用意されていますが、最近の判例を探すときは最終的に判例雑誌を1冊ずつチェックする必要があります。
 

2)判例集の略称

  判例集は「刑集」、「高民集」など、以下の様な略称で示されることがあります。なお「重要判例解説」(ジュリスト 6/10 臨時増刊)や「法律雑誌」の毎年第1号には、判例集と法律雑誌の略称一覧が掲載されているので、詳しくはそちらを参照して下さい。

           判例集・判例雑誌の略称一覧
 

3)判例の検索

 判例の検索を始める前に、検索の「手がかり」を整理してみましょう。下表の(ア)、(イ)の双方を埋められる項目があれば、それは有力な手がかりとなります。

判例を検索するための「手がかり」
@ 日付と裁判所

  ア) 判決日   平・昭            

  イ) 裁判所              裁判所

( ウ) 事件番号  平・昭    年(符号   )第      号 )

  ※ 事件番号は同一日の判決を特定するときに便利ですが、
    わからなくてもかまいません。

A 関係する法律・条文

  ア) 関係法令             

  イ) 条文          

B キーワード

  ア) キーワード            

  イ) 事件名              事件

   著名な事件であれば、事件名が手がかりになります。
     ただし、報道される事件名は訴訟の正式名称ではありません。
      例えば、「リクルート事件」は、判例集には「収賄被告事件」
      として登載されています。

  「判例の探索法」を用意しました。チャートが示すように、ある検索手段で目的の判例が見つからなくても、必ず「次の手」がありますから、あきらめずに探し続けることが大切です。判決言い渡しから1年以上経過した判例であれば、いずれかの索引に収録されている可能性が大きいので、チャートの最後に到達する前に判例を発見することができるでしょう。
 

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