商品交換の起点としての私的所有」として、

  有体物の上の私的所有
  債権の姿態をとる知的所有
  無体物の上の私的所有
  労働力の私的所有
  精神的創作物の上の私的所有
  企業の上の私的所有
 

 古典的な見方 「財産と有体物は同義」
          ↓ 
 「財産とは経済的な価値自体あるいは経済的価値を生み出すもの

 
  我妻博士『近代法における債権の優越的地位』(一九五三年)
  川村泰啓教授『商品交換法の体系T』(一九七三年)
 

財の証券化・流動化

「財」を経済的な価値それ自体として捉える。

 ←→ 土地 「売却しなければ交換価値それ自体を実現することができない。」
         建物を建てて家賃収入を得ようとしても建物の建築資金を有しない
         所有者は実現することができない。

     債権 弁済期到来前は取り立てることができず、価値は具体化しない。

 → その土地や債権の価値を担保として資金を調達し、これを活用することがで
    きるならば、当該財を処分せずにその価健を実現できるだけでなく、一つの
       財の価値を二度三度も活用することさえできることになる。

目的となっている土地や債権の価値が高い場合には、小口証券化して、またはその資産価値を担保とした小口証券を発行して売却することができるならば、より一層資金調達が容易になる。

 不動産の証券化

     賃貸不動産の収益率が低いことなどの経済的要因の克服が最も重要な課題。

 

 債権の証券化 債権の流動化

←→ 民法467条による対抗要件を具備することが、債務者に債権譲渡の事実を知られたくないという譲渡人側の要請に反するため、一般に債権譲渡通知を留保する方式がとられている。

 譲渡人の支払停止または破産の申立後の債権譲渡通知は破産法74条による対抗要件否認の対象になると解されており、こうした方式は極めてリスクが高いものとなっている。、この点に関する法制度の整備が強く求められ、現在、急ピッチで立法作業が進められている。

 

競争的利益

  独占禁止法との関係

    「「財」とは、経済的な価値ないしその価値を生み出すもの。」

= 各種の財を経済活動の場にあるものとして、その動的側面において捉えるということ。その意味で、競争秩序の維持は「財」に関する法律関係を成り立たせる不可欠の基礎であり、競争秩序違反行為に対する対応も民法学の課題とされるべき。

 

  競争秩序を維持することを直接の目的とする法律としての独占禁止法

  公正取引委員会による独占的権限行使

←→ 競争秩序違反行為によって特定私人の営業上の利益が害されている場合には、公正取引委員会の権限行使を待つまでもなく、当該被害者が直接に差止請求や損害賠償請求等の民事的救済を求める途を聞くことが必要。

→ 近時強調されている規制緩和論が実現される場合には、競争秩序維持制度の整備が不可欠となり、そこにおける私人の能動的役割も増大されるべき。

 

  不正競争防止法および知的財産権法との関係。 

     今日の社会におげる特許権、商標権、著作権その他の知的財産権の重要性。

←→ 知的財産権の周辺には、ノウ・ハウ、営業秘密など絶対権的保護の対象とはなっていないが財産的な価値のある情報があり、これらに対する侵害は、当面、不公正な競争行為によって営業上の利益を侵害する行為として不法行為的サンクションの対象とすべき。

 近年のコンピュータの普及は、データベース産業を発展させつつあるが、デジタル化された情報は容易に複製し、再生することができるという特質をもっているため、不公正な方法によってデータベースにアクセスし、無断で作成された複製品を廉価に販売するといった行為が容易に実現できる。

 当該データベースの作成に多大の費用と労力が投下されていても、その内容が著作権法による保護の対象にならない場合には、その侵害行為は、財物を侵奪する行為と捉えることはできないし、少なくとも現行法上は絶対権侵害行為ということもできない。しかし、こうした行為は、不公正な手法を用いてデータベース作成者の営業機会を奪い、競争上の利益を簒奪するものであることは間違いないのであって、これを公正な競争秩序に違反する違法な行為であるとして法的サンクションの対象としようとするならば、当面、民法の不法行為・不当利得の解釈論によってこれに対処するか、不法行為法の特別法としての不正競争防止法によるサソクションの対象とする旨の法改正を行うことしかない。

 
 「有体物規律の民法の限界と知的財産権(知的所有権法・無体財産法)」

 (財 ― 総論 鎌田 薫 早稲田大学教授) より

  

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