知的財産権の現代的問題 1 ー 複製権の陳腐化

 

 近年のコンピューター及びこれと結び付いた情報通信、さらにバイオテクノロジーといった新しい技術の発達は、知的財産権の領域に、その振り分けの問題等、困難な問題をもたらした。主要な問題を取り上げよう。

複写技術と著作権法30条 − 技術の進歩とその普及が権利の保護形態を変える可能性がある問題として、著作権の中心的権利である複写技術がある。旧著作権法30条(明治32年)機械的・科学的方法による複製をすべて違法として取り扱っていた。複製をなす者が、出版者・レコード業者等に限定されていた時代である。しかし、その後、複写機・テープレコーダーが開発され、広く一般に対して普及した。これを受けて、昭和45年改正の改正で、私的使用のための複製が合法化された。私的使用のための複製は、著作権者の経済的利益を大きく害することはないという発想である。「著作者の正当な権利を不当に害しないことを条件と(ベルヌ条約9条(2)但書)」して、複製権の制限を国内法でなし得ることに基く。

 その後の複製技術の進展と一般への浸透により、私的使用のための複製であるから著作権者の経済的利益を害することはないといえなくなった。特にDAT・コンピューターソフト等のデジタル情報のコピーは、質の劣化の問題を生じない。このため、私的使用のためであっても、何らかの制限がなされるべき状況が生じている。しかし、現実問題としての、個々の複製行為者からの網羅的な料金を徴収したり、その使用の差止を求めることは不可能である。このため、複製機器や記録媒体から料金をあらかじめ徴収し、権利者に分配したり、機械の機能として、複製の回数を制限したりする方法がとられている。

 

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