民事裁判で裁判所と当事者(代理人を含む)の間でのやり取りとしては,訴えの提起等の当事者から裁判所への申立て,準備書面の提 出,判決等の裁判の言渡し,当事者間(ないし代理人間)のやりとりがある。
これらのコミュニケーションをインターネット上で行う方法には,現在,電子メールに よる方法と,裁判所のウェブページ上のフォームに直接書き込む方法の 二 種類が使われている。後者は,直接裁判所のウェブサイトにアクセスし,ウェブページ上のフォームに入力するものである。
ドイツでは,2001年6月に制定された「裁
判所の手続における送達手続を改正する法律(2002年7月1日施行 − 以下「送達法改正法」と略す。)」と同年7月に制定された「新
たな取引に私法上の様式に関する規定その他の規定を適合させるための法律(2002年8月1日施行 − 以下「私
法形式規定適合化法」と略す。)」で民事訴訟法(ZPO)を改正し,訴えの提起と判決の送達を電子的にできるようにした。
「口頭弁論(ZPO
128条以下 – 日本民訴148条以下に相
当)」の「準備書面の内容(ZPO 130条 − 民訴161条に相当)」に続き,130条aを追加し,準備書面の電子的申立てを可能にした。さらに,「地方裁判所の手続(ZPO 253条
以下 − 民訴133条以下に相当)」の「訴状(253条4項 − 民訴133条に相当)」で,準備書面に関する規定を準用し,訴えの提起に電子的申立てを利用できる
ようにしている。さらに,送達の規定の174条1項及び3項で,公法上の機関,弁護士等には無条件で,また,その他の手続の関係者に対しては明示の同意がある場合,判決を含む送達を電子的文書でなすことができるようにし
ている。
電子的文書には,ドイツ民法126条aの規定する「適格
電子署名」がなされていれば,ZPO292条aで,民事訴訟法上表
見証拠として扱われ,真正性が推定されている。
弁護士事務所の実務としては,PINコード(Personal Identification Number)とICカードの
組み合わせによる電子署名を行っているが,利用しているドイツ国内の弁護士の八割が,秘密にしなければならないこのPINコードを自分
の秘書に教えて,秘書に電子署名の作業を任せてしまっているという。将来的には,指紋・声紋等のバイオメトリクス認証などの導入が必要になるだろうといわ
れている。
・バイオメトリクスとICカード製品については,例えば,音声による認証機能を組み込んだICカードとし
て,以下を参照。
http://www.zdnet.co.jp/enterprise/0309/03/epn16.html