日本法では,弁論準備手続で電話会議システム(民訴170条3項)を認め,証人尋問にテレビ 会議システム(民訴204条)を導入し,中間試案ではそれぞれの利用の拡大が提言されている。
アメリカのミシガン州サイバーコート
2002年1月9日,ミシガン裁判所法に「第80章サイバーコート」を追加する法律(以下「サイバーコート法」と略す。)が議会を通過。
すべての審理,手続きを電子的通信手段によって行う初めての裁判手続であり,2002年10月1日に開始される予定だったが,予算に関する議会の承認を得ることができず,延期された。
2000年3月28日,ミシガン州最高裁判所「民事訴訟法規則と証拠法規則の改正案を,オーダー(以下「改正案
オーダー」と略す。)の形で公表
・裁判所規則の民事訴訟法の項に,サブチャプター2700「電子的手続(Electronic
Practice)」を置くとともに,その他の条文の改正を提案し,パブリックコメントを求めた。(本稿脱稿時2000年9月7日現在,まだ,改正へは至っていない。)
2002年12月11日サイバーコート法施行直前,同法を修正する法案(以下「修正法案」と略す。) が提出され,成立。
サイバーコート法と,拘束力があるわけではないが,「改正案オーダー」を併せ読むと, その構造を理解できる。
まず,「改正案オーダー2703」で,様々な概念をサイバーコートのために定義し直している。
「サイバーコート は,すべての審理及び手続を,ビデオ会議及びインターネット会議を含む(これに限定されない)電子的通信手段によって行われる。(サイバーコート法8条3項)」
対象は,25,000ドルを超える商事紛争(business or commercial dispute)で ある(修正法案8005条)。開廷時間は,通常の昼間の時間帯だが,文書の提出のためには(Filing purposes),常時開廷し,審理を開廷時間以外に開くことも認めている(改正案オーダー2710 (c) )。
裁判官が 物理的に在廷している所を主たる場所とし,遠隔地で利用する所を従たる場所としている。「場所」に関しては,特に制限はなく,「裁判長が技術的な要件を満たしているとして指定した、いかなる場所においても開廷しなければ ならない」としている。(改正案オーダー2713(a))
文書の電子的申立ては,認可され,登録された電子的申立人だけが行うことができる(改正案オーダー2711)。
被告は,サイバーコートで応訴する義務があるわけではなく,「訴状に対する答弁書の提出期限後14日以内に移送の申立てを行」うことにより,通常 裁判へ移送させることができる。
「当事者又は証人は,裁判所の許可を得て、ディスカヴァリおよびプリトライアルを含む 手続に送受信兼用の、双方向的ビデオ技術、ビデオ会議技術、またはインターネット放送技術(internet broadcast)の利用を通じて、出頭することができる。 (改正案オーダー2.705)」
ユニークなのは,審
理の公開方法で,裁判の主たる場所・従たる場所への参加,ケーブルテ
レビの放送に加えて,「可能な限り」との限定はあるものの,ウェブ上
の放送を求めている点である。(改正案オーダー2.713)
また,サイバー コートにADRを促すことを求め,ADRが選択された場合に,サイ バーコートの設備をADRに十分に利用できるようにしなければならないことを定めている(改正案オーダー2.715)。
ドイツでは,先の民事訴訟法の改正で,当事者の同意がある場合に,画像と音声を同時中継する形で遠隔裁判を認めてい
る。(ZPO128条a)
・サイバーコート法
http://www.michiganlegislature.org/documents/2001-2002/publicact/pdf/2001-PA-0262.pdf
・改正案オーダ
http://courts.michigan.gov/supremecourt/Resources/Administrative/2002-04_03-26-02.pdf
・court rules http://courtofappeals.mijud.net/rules/public/default.asp
・サイバーコート修正法案
http://www.michiganlegislature.org/documents/2001-2002/billengrossed/house/pdf/2002-HEBS-6447.pdf
・サイバーコートネット自身の説明に関しては,以下を参照。Michigan’s Cyber Court
http://www.michigancybercourt.net/Documents/cybercourt-802.pdf