10/05 1998 ウェブ・ティービー、古川享会インタビュー

 

ウェブTV  テレビを利用してインターネットを楽しむシステム

 

運営:ウェブ・ティービー・ネットワークス(199712月に国内サービス開始)

 

−−現状では一般家庭でインターネット普及が進んでいるとは言えない状況だ。ウェブTVが足がかりになるかとは思うが、将来をどう予測しているのか。

 

 現状のパソコンを中心にしたインターネットがそのまま家庭に普及することはない。1人で部屋にこもってキーボードを操作するという使い方では、利用は限られる。インターネットとテレビのような既存のメディアが融合して、はじめて家庭に普及するだろう。今ではテレビショッピングを見て商品を買いたいと思った時、ファクシミリや電話で申し込んでいる。ところがインターネットとつながっていて連動していれば、ショッピング番組を見ながらリモコンのボタンで自分のIDを入力するだけで申し込むことが可能になる。テレビを面白い、参加したいと思った瞬間、現状ではファクスや電話などの機器が必要だが、インターネットと融合すればすべて1つの機器でできるようになる。テレビの番組ガイドもインターネット経由で情報提供しそれに合わせて録画の予約も可能だろう。テレビをより楽しく便利にする媒体がインターネットの役割で、家庭のユーザーはインターネットを意識することなく自然に利用できるようなシステムを提供することが普及拡大につながるだろう。

 

−−テレビとインターネットの連携は米国では始まっているが、日本ではいつごろ可能になるのか。具体的にはどんな利用法が想定されるか。

 

 今年の冬の商戦にはウェブTVの新バージョンとして提供できる。現行のウェブTVも買い物の一部とかある程度利用できるが、新バージョンではあなたのテレビにあなたの興味を持っている情報を映します、というコンセプトになる。例えばテレビに面白いチャンネルがないとき今では本を読むかゲームをするかだが、今後は自然にインターネットを見るようになる。既存のメディアがインターネットによってよりパーソナルなものに変わっていく。視聴率や発行部数ではなくあなたなのために改造しました、ということだ。株式市況でもすべての銘柄を見たい人はなく、通常自分の関心のある銘柄だけ。しかも値動きは既存のメディアでは分かりずらい。ところが電子メディアでは毎日同じ銘柄の株価が分かり価格の動きも瞬時に知ることができる。昨日の続きを浮き出してみせるのがパーソナルなメディア。それを家庭で簡単に実現できるのがウェブTVだ。

 

−−テレビとの連動としては既に番組の情報を紹介するホームページが多数公開されている。ウェブTVはさらに一歩進んだ楽しみ方を提供することになるのか。

 

 今のバージョンでは、インターネットの表示を待っている時にはただ待つことになるが、新バージョンではチューナーが端末に組み込まれるため、画面の一部にテレビ番組を表示することが可能になる。テレビとインターネットが同時に見られるわけで、完全な連携が実現できる。今テレビ番組の中で、番組のホームページアドレスが紹介されているが、今後はああした目障りな物が消え、リモコンのスイッチ一つでテレビ番組からホームページに飛ぶことができる。そうなると、プロ野球中継の番組を見ながらインターネットで選手の詳細なデータをリアルタイムに閲覧できたり、音楽番組を見ている時にアーティストの情報をその場でインターネットから入手できるようになる。今自分が見ているのはインターネットかテレビ番組なのかは全く意識することなく、ほしい情報を見て楽しめることになる。

 

−−ただ番組とインターネットの連携をアピールするとなると、テレビ制作者側が連携したサイトを作成する必要が出てくる。さらにユーザーにとってはインターネットに接続していることで電話代も多額になる。

 

 番組と連動したサイトの構築に関しては今、テレビ関係者らに提案しているところだ。既にの通常形でサイトを開設している番組は多いものの、番組とうまく連動していないケースが少なくない。そういう番組の担当者に、ウェブTVの連携機能を訴えている。まだウェブTVというと端末を思い浮かべられることが多く、システムサービスだと理解されていないことが悩みだ。電話代については、接続し続けているというのではなく、こまめに切ることやテレホーダイタイムの夜中に必要な情報を前もってダウンロードしておいたり、ケーブルテレビの回線利用なども考えられる。それほど負担になることはないと思う。

 

−−ウェブTVは昨年12月のサービス開始以来1年半以上が過ぎたが、なかなか利用者が伸びないのが実状で、まだ1万人に満たないとされている。今後ブレイクする可能性は。

 

 啓蒙するのに時間がかかっていることは確かだ。ただ電話、カラーテレビ、自動車、パソコンの普及にどのくらいの時間がかかったかを考えれば、どんなものでも初期の頃はこういう状況だろう。ブレークスルーに達するには時間がかかる。今はそういう時だと思う。ウインドウズ9598の爆発的な普及のスピードを見ていると、確かにウェブTVは遅いかも知れない。しかし初期のパソコンでもなかなか月に3000台とか売れるようにならなかった。今ブレイクしていないのではない。そう考えると現状でも結構引きがあるといえるのではないか。ウェブTVはハイテクコンシャスな人ではなく、幅広い層に使ってもらうものだから、良さをアピールするのは簡単ではない。テレビCMを打っても効果がすぐに現れるという物でもない。冬の商戦で出す新バージョンで、一気に普及を目指す。

 

 【メモ】古川会長は和光大学人間関係学科中退後1979年アスキー入社し、82年取締役。86年アスキー退社と同時にマイクロソフトを設立し、初代社長に就き91年会長就任。97年ウェブ・ティービー・ネットワークス会長兼務。東京都出身、44歳。

 

ウェブ・ティービー・ネットワークス http://webtv.co.jp/

(山川 健 Staff Writer[Mainichi Daily Mail Internet/ 981005]

MI: ネットがテレビを面白くする ウェブ・ティービー、古川享会 (99/111)

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