10/26 1998 「ネット上をデータが走る」

 

 新たな流通革命の担い手と期待が高まる電子商取引が、いよいよ現実の姿を現し始めた。コンピューター技術と結びついた新時代の通信回線網(ネットワーク)を、精細な画像や、暗号に守られた各種の商取引データ、そして電子マネーが走り回る。ネット上には仮想社会も誕生している。ネットワークの主人公は昔ながらの音声通話から、こうしたデータ伝送に移り始めている。未来の流通システムへと変ぼうするネットワークを支える技術の周辺を探った。

 「後で振り返ってみて、あの時代に随分変わりましたね、と言われるだろう」

 来年夏の再編を控える情報通信の巨人NTTの将来像を、宮津純一郎社長は「情報流通業」と表現する。通信業から、回線を生かした情報流通システムを提供する企業への脱皮宣言だ。

 国内の加入電話が1997年度、初めて減少に転じた。その一方で、高速でインターネットに接続できる総合デジタル通信網(ISDN)の加入件数は同年度末に262万回線と1年間で倍増した。データ伝送による収入もNTTで約25%増、新電電各社も3、4倍の伸びを示すなど、データ通信の台頭は収益構造にも影響を与え始めている。

 「インターネットが進化していけば、機能や価格面で電話に勝ち目はない。将来の電話は特殊な用途に限られしまうかもしれない」と新電電の幹部。通信各社は今、データ通信へのシフトに躍起だ。

 NTTは来春から電子マネー「スーパーキャッシュ」の実験を始める。ネットワークを走るお金は情報流通システムの提供という新たな事業形態に欠かせない技術だ。

 さらに「ファイバー・ツー・ザ・ホーム」構想も推進中だ。映像の送受信など従来の電話網とはけた違いのデータが伝送できる光ファイバー網を家庭にまで張り巡らせ「2005年には毎秒10メガビットの回線を月額1万円で提供する」とNTT。映画やテレビ番組が伝送できる容量だ。

 高速、大容量の回線と決済手段が組み合わさり、音声、画像、動画、そしてお金まであらゆるデータがネットワークに流れ込む準備が着々と整っていく。

[1998-10-26-15:33]

KK: ◎始動・電子商取引=1  ネット上をデータが走る (14/17) 共同通信経済ニュース速報

 

 

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