私的自治の原則 − 個人の自由の私法上の現れとして、「個人を拘束し、権利義務関係を成立させるには、それぞれの意思に基づかなければならない」という私的自治(ないし、意思自治)の原則が生まれた。契約関係も、この私的自治の一つの顕現として、契約を、誰と(相手方選択)、どういう内容で(内容)、どのような方式で(方式)、締結するあるいはしないか(締結)、すべて契約当事者の意思に基づき、自由に決めることを原則とした(契約自由の原則)。この原則も、特に経済的自由主義に基く資本主義初期の発展段階に大きく寄与した。

所有権絶対の原則 − 商品交換を中心とする市場経済は、商品を交換する者の間で、相互に商品としての財貨の上に固有の支配権が認められることを前提とする。この法律上の現れが財産権であり、その中心となるのが所有権である。封建時代の反動もあり、財産権は神聖にして不可侵の基本的人権の一つとされ(フランス人権宣言17条、憲法29条参照)、これによって近代的な私有財産制度が確立された。私有財産制は、土地等の天然資源、生産手段・設備を私有とし、その管理・処分を個人の自由に委ねる制度であり、資本主義の発展に大きな役割をはたした。ここで、財産権の中心的な権利としての所有権について、所有権絶対の原則が認められた。

過失責任の原則 − また、この個人の自由な活動を裏面から支えるものとして、過失責任の原則が成立した。すなわち、個人の自由な活動から他人に損害が発生した場合、その損害の発生に関して、行為者に少なくとも過失がなければ損害賠償責任を負わないとする原則である。この原則によって、少なくとも過失責任という大枠の中で、個人は、損害賠償責任を負うことなく、自由な活動をすることができる。

 民法は、415条で債務不履行による損害賠償責任に関し、「債務者ノ責ニ帰スヘキ事由」(帰責事由)を要求し、709条で不法行為に基づく損害賠償責任に関し、「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者」と、少なくとも過失を求め、この原則を定めている。

 

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