-第3章- 電子認証 電子公証(2)

    【オンライン版の公証人】
【オンライン版の公証人】

  − 電子公証制度

 「公証」とは、特定の法律事実又は法律関係の存在を公に証明する行為をいい、公証された事柄は、反証のない限り公の証明力をもつ。これを行う人のことを公証人といい、嘱託により法律行為その他私権に関する事実について公正証書(同義反復だが「公証人が作成した証書」の意)を作成し、また私署証書や定款に認証を与える権限をもつ者をいう(公証一条)。公証人役場で行われる(公証一七・一八条)。

 先日、大学のゼミの大学生が、私の助言も会ったのだが、相手方の不履行を見越して、強制執行が容易にできるようにと、公証人役場で公正証書の一つである執行証書を作ってきた。金額が数千万単位の問題だったので安全を期したのである。しかし、法律に詳しくない個人が公証人役場を訪れることはあまりないかもしれない。あるとすれば、助言する人がいて、一番確実な方式である「公正証書遺言」をするときか、家を買うときくらいだろう。

 約束や契約をするときに一番確実なのは証人に立ち会ってもらうことだが、公証人は、いわば公的な立会い証人である。そのオンライン版が電子公証制度である。電子的に作成された契約初等が特定の者によって真正に作成されたことを公証する他、これに確定日附を付し、また、電子的な記録の形で公正証書を作成し、かつ、これらの電子文書を保存し、その存在、内容等を証明する制度ということができる。情報の内容の改ざん等に備え、情報の内容を事後的に確認し、証明するための仕組みといえる。

公証人の中から指定された人が担当し(指定公証人)、電子私署証書の認証、文書についての認証(私書証書の認証制度の電子化)、電子確定日付の付与(民法施行法の一部改正)といった、従来の公証人の機能を電子化したものである。

さらに、それに付け加えて、認証を受け、または日付情報、附箋を付された情報を保存し、その内容を証明するという新しい制度が設けられた。従来なかった内容の証明が、電子公証制度では認められることになった。

前章とここで述べた法律の制定及び改正は、電子商取引の安全性を保障するもので、ようやく日本でも電子商取引が本格化することができるようにしたものとして非常に重要なものである。従来からいわゆるネット売買等を利用していた人にはいまさらの感があるかもしれないが、個人と企業(B to C)の数十倍といわれる企業と企業(B to B)の電子商取引の社会基盤がようやく整ったのである。その意味では、この法律の意味は、後から見れば、電子商取引元年と評価できるほどのインパクトを社会に与えることであろう。