第1回要旨集より はじめに

1986. 5. 26.

 本日は皆様御多忙のところを,また,遠路はるばる本研究会に御出席頂き,厚く御礼申し上げます。“タンパク質ハイブリッド研究会”の発足を計画致しましたのは約2年前であり,多くの方々と相談致しましたところ御賛同を得ることができ,本日(5月26日)第1回研究会を開催することになりました。皆々様のお力添えを深く感謝致しております。
 近年Life Scienceに関する関心が急速に高まり,基礎的研究に加え,基礎研究成果を踏まえた応用研究への発展が世界的に計画されつつあります。本研究会は生体内で最も重要な機能の1つを担う生体高分子,特にタンパク質に焦点を合わせ,医学,薬学,工学および農学分野への応用利用に適合するように,人為的にタンパク質を修飾することを目的とします。さらに,タンパク質に限らず “修飾されるもの”と“修飾剤”の組み合わせによって,種々の興味あるハイブリッドが合成される可能性があります。従ってそれらをも含めた研究会に発展させたいと思っています。
 本研究会に関する興味ある現象は,1970年末頃より国内外において徐々に報告されるようになりました。現在までのものをまとめますと
1.合成高分子−タンパク質ハイブリッド
2.生理活性物質−タンパク質ハイブリッド
3.生理活性物質−合成高分子ハイブリッド
4.1〜3の組み合わせによるハイブリッド
等に大きく分類されます。本日の研究会においてその一部が講演されますが,その目的とするところは“修飾されるもの”と“修飾剤”の両者がそれぞれ有する性質を巧みに組みあわせて,一方の有する欠点を他方で補う,あるいはハイブリッド合成によって新しい機能を賦与することであります。このような興味ある現象に関する研究は,個性ある研究者によって散発的に発表されその分野も,医学,薬学,理学,工学,農学の広きに亘っておりますが,研究者間の情報の交換は十分でないと思われます。  本研究会はハイブリッドに関する国内外の情報を集め,情報の交換を行ない,基礎的研究の成果を通じて,実際社会に役立つ応用分野への発展を期待しています。 この研究会に専門を異にする科学者が集まり,境界領域の研究についての独創的研究成果を挙げられることを切に期待しております。
 最後に,研究会の発足にあたり,賛助会員として賛助金を頂いた多くの企業に深く感謝すると共に,さらに本研究会の主旨に御賛同頂き賛助会員になって頂ける企業を歓迎致します。

世話人 稲田祐二
東工大・理
現桐蔭横浜大教授


第10回要旨集より はじめに

1995. 5. 29.

 1986年5月26日“第1回タンパク質ハイブリッド研究会”を開催して以来、今年(1995年)で10回の研究会を迎えることになりました。その間この分野の研究は飛躍的に進歩し、1990年Bioconjugate Chemistryの科学誌がアメリカ化学協会より発刊された。翌年にはポリエチレングリコール−アデノシンデアミナーゼ(PEG-ADA)が米国のFDAで医薬として認可されさらに1994年、PEG-アスパラギナーゼが米、独で認可されたと聞いている。PEG-SODの認可も間近のようである。一方日本においてはSMANCSが薬剤として認められ臨床に使われているようである。このように、タンパク質を中心としたハイブリッドの研究の進展に刺激され、糖鎖ハイブリッドに関する研究も台頭し、糖鎖とタンパク質、糖鎖と薬剤、糖鎖と遺伝子等の糖鎖ハイブリッド工学が注目をあびている。
 このような状況のもとに、第10回研究会では、そのバイオ物質をタンパク質に限ることなく更に拡大し、“バイオハイブリッド研究会”と研究会の名称を変更することにした。バイオ物質といえばタンパク質、核酸、糖、生理活性物質、脂質、天然色素などが挙げられるが、これらの物質と結合させる物質がバイオ物質であることもあれば、無機物質あるいは合成高分子でもよいわけで、その組み合わせは多数ある。要はハイブリッド化した物質が、ハイブリッド化することによって、特徴ある機能を発現することが最も重要である。さらにこれらのハイブリッド物質が医薬農工学分野に利用されることを期待している。以上述べた組み合わせは2つの物質であるが、さらに3つあるいは4つの物質の組み合わせでもよい。
 本研究会に参加下さった方々がその専門の知識を基にし、専門外の分野をちょっと眺め、ハイブリッド化を試み、期待以上の効果が現れたときの喜びは何ものにも代え難いと私は思う。このように物質間のハイブリッド化も大切であるが、次世代の研究は専門の異なる研究者の交流、業種の異なる企業の交流、大学学部間の交流、産官学間の交流が必要であり、これらの交流も将に“ハイブリッド化”と言えよう。

稲田 祐二
桐蔭横浜大学教授
桐蔭人間科学工学センター長
東京工業大学名誉教授


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