桐蔭横浜大学医用工学部 臨床工学科 Makoto Goto Lab.
後藤 眞研究室
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1.早老症・ウエルナー症候群遺伝子ならびに関連遺伝子機能の解析
2.関節リウマチ発症進展機序の解析
1.早老症・ウエルナー症候群遺伝子ならびに関連遺伝子機能の解析
1. 早老症・ウエルナー症候群遺伝子( WRN:RecQ3 helicase ) ならびに関連遺伝子機能の解析
Functional analysis $ charcterization of Werner syndrome gene:RecQ3 DNA/RNA helicase (WRN) and related DNA/RNA metabolism enzymes
A. 研究の背景・歴史
18歳ごろから急速に加齢が進行し、白髪、しわがれ声、皮膚硬化(1)、皮膚のシミ、皮下の石灰化(2) 、骨粗鬆症(3) 、白内障、不妊症、甲状腺異常、糖尿病(4)、痛風(5) 、高脂血症(6) 、動脈硬化(7) 、脳萎縮、ガン(8,9) などの老人病、生活習慣病(メタボリックシンドローム)が、一般の人より約2倍のスピードで進行し、平均46歳で心筋梗塞、癌で死亡する。(9,10,11)
常染色体性劣性の遺伝病であるウエルナー症候群は、両親がいとこ同士などの血族結婚によることが多い(10)
ウエルナー症候群の典型的な症状を写真で説明する。
写真1 写真2
上の写真は、50歳男性患者:
ウエルナー症候群の特徴的な鳥様顔貌(禿頭、白内障、細くとがった鼻、口囲のしわ、顔に張り付いたような耳)
上の写真は、43歳男性患者:
胴回りが比較的あるが、手足が非常に細く、皮膚が硬化。両足底には、皮膚潰瘍。禿頭のため、かつらをつけている。
写真3 写真4
上の写真は、47 歳女性患者:
足関部内顆部の巨大皮膚潰瘍。
上の写真は39歳男性患者:
アキレス腱部の石灰化と骨粗鬆症
遺伝子は、常染色体短腕8p12に位置する(12)DNA/RNA 代謝酵素であるRecQ3 helicase であることが判明し(13,14) 、研究が急速に拡大した。しかし、日本人では、100人に一人の割合でヘテロ(遺伝子欠損が一つだけで特に加齢促進症状のない健康人)が存在し、おそらく日本では、最も頻度の高い遺伝病だと考えられている(15) 。本邦以外では、頻度は、本邦の数十分の1以下と推定される。

1904年にドイツのOtto Werner によって、初めて報告されて以来、世界各地で報告され、2005年秋までに、1300例ほど、そのうち1000例以上の80% が日本人であり、日本人に特有な遺伝病といえる。しかし、日本では、まだ2000人以上の患者が診断されないままに見過ごされていると推計されている(9,10,11)

われわれの研究室では、患者からのインフォームド・コンセントを取得したうえで、無料で遺伝子(WRN)診断を行って、主治医に治療上のアドバイスを行っている。遺伝子診断の方法は、リンパ球をEBウイルスでトランスフォームし、ウエルナー症候群遺伝子産物(WRNp:RecQ3 helicase タンパク質)が産生されていないことがウエスタン・ブロッチングで確認できれば、ウエルナー症候群と診断している。

さらに、日本人の患者では、われわれが変異1,4,6と呼んでいる3種類の変異で、患者の80%を占めているため(13,15), まず、MASA法,OLA 法と呼ばれる方法で検索(16) し、それ以外の場合には、WRN 遺伝子領域のシークエンスにより判定する。WRN 遺伝子の構造は、図のようである。
図
ウエルナー症候群が早老症の代表として集中的に研究されてきた理由は、特異な臨床症状が、思春期以降に始まる一般人の加齢のパターンをちょうど2倍のスピードにして発症し、平均寿命も半分という以外に、以下に挙げられるような理由による。
1. 暦年齢と相関する皮膚の繊維芽細胞の寿命が、同年齢の健常人と比べて異常に短く、PDL の低下、DNAレプリケーション・フォーク数の低下、培養細胞のS-phase の延長など加齢促進機序が背景にある可能性がある(17)
2. 血清、尿中のヒアルロン酸、フィブロネクチン濃度が年齢不相応に異常に増加(18,19)
3. 免疫機能では、健常人の加齢とくらべ、ある種のT 細胞分画の減少(20) 、ナチュラル・キラー活性の低下(21) 、自己抗体の増加(20,22) など加齢促進が認められる(23)
4. 細胞遺伝学的研究で、体細胞分裂時の染色体の不安定性(逆位、欠失、逆転座、相同組み換え、組み換え異常など)が認められ、加齢促進状態と考えられる(24)
5. 以下に列挙されるような他の早老症状を示す遺伝性疾患の責任遺伝子はhelicase をはじめ、DNA/RNA 代謝に関連した酵素であることが判明している(25,26)
6. マウスのRecQ3 helicase とテロメアの修復酵素であるテロメラーゼをダブル・ノックアウトすると、ヒトのウエルナー症候群と似た老化症状が出現した(27)
代表的な遺伝性の早老症として、Werner 症候群、Progeria(Hutchinson Gilford 症候群)Rothmund Thomson 症候群、Cockayne 症候群があり、Bloom 症候群、血管拡張性失調症や、染色体異常症であるDown 症候群を加えることもある。いずれもきわめて希な疾患ばかりである。ほとんどの早老症の遺伝子が、DNA/RNA 代謝に関連した酵素であることが判明している。
そのため、細胞増殖分裂時の異常により、遺伝子の他領域の変異、他遺伝子との共同作業の異常などがおき、異常な臨床症状が発症する可能性が研究されている。
B. 研究内容Research projects
1. WRN 遺伝子、ならびに関連する遺伝子の変異、多型、後生的変化による各種加齢関連症状発現機構の解析
Characterization of the function of WRN gene and associated genes:association of their mutation, polymorhism and epigenetical changes with age-related phenotypes.
2. ウエルナー症候群に特徴的な肉腫発症機構の遺伝的、ならびに微小環境の解析
Characterization of genetical and micro-environmental factors for sarcomatogenesis in Werner syndrome
3. ヒアルロン酸、ヒアルロン酸レセプターのウエルナー症候群における加齢、発ガン機構における関与の解析
Characterization of hyaluronan and hyaluronan receptor on the pathogenesis of aging phenotype and carcinogensis in Werner syndrome.
 
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