研究内容

植物系の研究

葉の振動解析による植物の水ストレスの推定

植物固有振動計測
葉の振動計測実験

植物工場などにおいて最適潅水制御を行うためには、いま植物がどのくらい水を欲しているか(植物の水ストレス)を、非侵襲かつ実時間に知る必要があります。 しかし植物は言葉を話しませんので、外見や様々な応答から、植物が発するメッセージを『聴く』必要があります。

このような手法をSPA(Speaking Plant Approach)と呼びますが、 当研究室では、植物の固有振動数を計測し、その変化から植物のしおれを検出し、植物の水ストレスを推定する方法を提案し、その有効性を検証しています。

現在は、葉を超音波の音響放射圧で押して振動させ、その減衰振動をレーザ変位計やハイスピードカメラを用いて計測し、得られた振動変位をフーリエ変換してパワースペクトルを求め、 そのピーク周波数から葉の固有振動数を求めています。超音波としては、指向性スピーカとして知られる「パラメトリックスピーカ」から放射される40 kHzのキャリアを利用しています。

医用系の研究

上腕圧迫時の脈波振動による血管年齢推定

コロトコフ音測定風景
コロトコフ音測定風景

動脈は年齢とともに徐々に弾力を失います。すなわち、動脈は年齢に応じて硬くなります。この動脈の硬化の度合いを相応の年齢で表したものが血管年齢です。

血管年齢は、指先(指尖部)で観測される脈波(容積脈波)を2回微分した波形(加速度脈波)によって推定できることが報告されており その一般的な傾向として、弾力のある若い血管では大きな振動成分が現れますが、硬化が進むにつれ、振動せずにゆっくり変化するようになります。

本研究室では、一般の血圧測定で用いられる上腕部圧迫の際に観測される脈波やコロトコフ音にも、このような血管の弾力の情報が含まれていると考え、 その振動解析を行っております。特に近年の自動血圧計では、血圧測定時の脈波を直接計測して最高・最低血圧を求めていることから、 本研究室でも、コロトコフ音でなく、カフ圧に現れる脈波を用いて、血管年齢が推定できないか研究を行っています。

睡眠時無呼吸症候群検査のための非接触呼吸数モニタに関する研究

呼吸数モニタ
呼吸数モニタの概念図

呼吸数をモニタする方法はさまざま考案されていますが、呼吸音を計測する方法は、鼻のそばにマイクを接着する必要がある他、 睡眠中に外れてしまったり、ケーブルが絡まるなどの問題も多くあります。

そこで、集音マイクによって顔付近の音を選択的に採取することにより呼吸数がモニタできないか研究を行っています。 この方法単独での推定は難しいと思われますが、他の方法と相補的に用いることで、より確実な診断が可能になると考えています。

ペースメーカ電源を目的とした体内発電に関する研究

誘導発電機
体内発電の概念図

ペースメーカは1次電池で駆動しているため、定期的な電池交換手術が必要であり、装着者への負担が大きいという問題点があります。 また、2次電池を用いて、体外から充電する場合も、充電のために長い時間の拘束が必要になります。 そこで、鼓動や日常の活動により生じる振動エネルギーを、少しずつ大容量の電気二重層コンデンサに蓄電し、半永久的に電力を供給する方法を検討しています。

sano@toin.ac.jp