Close up! Campus 2007

大学トップ大学紹介Close up! Campus 2007> 宮坂研究室

新型太陽電池で地球にやさしい生活を追求

大学院工学研究科 医用工学専攻 宮坂研究室 MIYASAKA Lab.

2007/06/11 掲載


4月21日のNHK教育テレビの「サイエンス・ゼロ」で紹介された桐蔭横浜大学の宮坂研究室を紹介します。宮坂力教授は、大学院の工学研究科長ですが、専門は電気化学。電気化学(電気がかかわる化学)といえば、燃料電池や光触媒といった環境とエネルギーで脚光を浴びている分野です。新型の太陽電池が、化学の分野で作られるということは、知らない人も多いのではないでしょうか。宮坂先生へ聞いてみました。


研究室はどのようなグループですか。

研究室のゼミ合宿にて(伊豆高原)
写真1)研究室のゼミ合宿にて(伊豆高原)

大学の技術開発センター(図書館棟)の4階が研究室です。横浜の高層ビルまで見渡せる部屋で、窓から入る太陽光を実験にも活用しています。東京大学にも宮坂研究室があり、桐蔭横浜大から東大に移った大学院生もここで、それから本学ベンチャー「ペクセル・テクノロジーズ」の研究者もここで一緒に意見を出し合い研究をしています。ゼミのメンバーはカラフルで活気があります。企業から技術相談に来る人が実験室を見学しますので、学生にとっては企業担当者と接して自分を紹介するチャンスです。ある大企業にこうして就職が内定した学生もいます。TVの取材も多く、カメラが学生にも向けられますから「この研究は自分の担当」という自信につながるでしょう。他の研究室もそうですが、いつも夜10時過ぎまで明るく活気にあふれています。

これは私の恩師がよく言っていたことですが、研究室と大学の発展で第一に大切なのは雰囲気であると。たしかにそう思います。教授との一体感と、自由に研究できるムードは桐蔭横浜大学の特長、ひとことで言って少人数教育の大きな得点です。卒業研究の教員あたりの配属は国立並み(数人)です。これが早稲田、慶応だと、10〜20人で、学生が教員に接する時間は少なく、理系の学生はおそらく半分は不消化のまま卒業してしまう(させられる)のではないでしょうか。桐蔭では卒業までに学会発表や海外出張まで経験する学生がいます。今年は、理科の池田先生(桐蔭女子部)がここで博士号を取りましたが、短い期間に論文業績を積んで海外にも名前を残すことができました。他大学でも珍しいケースです。

研究室は、大学院の医用工学専攻に属し、学部では「生命・環境システム工学科」につながっています。東京大学では、駒場の広域システム科学系に属しますが、実はここでも生命・環境は、大学の看板分野となっています。環境科学は、企業も重視し、これから伸びる分野です。


フィルム状の太陽電池とはどんなものですか。

ひとことで言うのは難しいですが、色素が光を吸収するタイプの新型太陽電池(色素増感太陽電池)です。NHKのTV「サイエンスゼロ」でも話したように(再放送は4月27日)、植物の光合成では、まず発電をして、そのエネルギーによって最後に炭酸ガスを還元しています。この発電を途中で横取りすると太陽電池の原理ができあがるわけです。この発電というのは、酸化還元がつくる電気化学エネルギー(私の専門分野)で、光によっても生まれるのです。たとえば、緑の光(光子)はおよそ1.5Vの電圧に相当します。

このように電気化学エネルギーを光からつくる分野を「光電気化学」と言います。実は、大学ベンチャーの名称ペクセル(Peccell)は、この光電気化学セルの頭文字を取ったものです。そして光触媒の発明でいまノーベル化学賞の候補となっている本多健一先生(私の恩師)はこの分野を築いた人で、実は、本多先生は桐蔭の太陽電池の成功にとても大きな夢を託しているのです。

色素増感太陽電池は、色素と酸化チタン粒子そして電解液から作り、薄いプラスチック電極で挟んでフィルム状にします。植物光合成の5倍の効率で太陽光を電力に換えます。


応用は発電する服、帽子まで

光合成の葉緑素を使っても0.5V程度、人工の色素を使うと0.8Vまで発電し、直列につないだ太陽電池では携帯電話も動かせることがわかりました(TVで紹介)。

研究室から人工芝グラウンドに向けてかざしたシースルー太陽電池
写真2)研究室から人工芝グラウンドに向けてかざしたシースルー太陽電池

愛知万博での展示に続いて、われわれの作った、葉のようにしなやかで透明のフィルム太陽電池(写真2)が、いま都心で展示されています。色素を使う電池はカラフルで、デザイン適性も生まれます。写真3のように、服や帽子に縫いつければ、いつでもどこでも電力を取り出すユビキタス電源に早変わり。シースルーにもできますからこれを車の窓に使うことも提案されています。もうすぐにこのような時代が来るでしょうが、われわれの技術はまさにここで活躍します。

競合する大学、企業もありますが、いまこの分野では桐蔭がまぎれもなく日本、世界の中心にいます。昨年は安部総理へ提案する内閣府からも声がかかりました。20社以上の大手企業がこの研究で桐蔭と産学連携を進めています。

もうすこし紹介しましょう。私たちが大学院の医用工学専攻に所属しているので、不思議に思われる人も多いかもしれません。実はつながりがあります。高齢化が進む時代で、医療の分野で工学の活躍が期待されています。

ウエアラブル(身に付ける)ソーラーパワー
写真3)ウエアラブル(身に付ける)ソーラーパワー

血圧や心拍数を、身に付けた小型デバイスでモニターし、無線(携帯電話)で病院のセンターに24時間伝送し、健康管理をするという時代が来つつあるのです。たとえばスポーツ中や、運転中に緊張して健康状態が危なくなると病院から警告が入ると言うわけです。このほか、無線ネットは道案内や子供の安全監視という目的にももちろん活躍します。医療現場においても、今やエレクトロニクス機器は医者と同じように医療を支える主人公です。桐蔭横浜大学の目指す特長、医療分野を先導する技術、の応用はここにもあるわけです。


桐蔭の太陽電池がいよいよ全国の授業に

新型太陽電池は、この大学でなければスピーディーには生まれなかったでしょう。学生が活躍できる環境、研究に大切な雰囲気がここにはあります。実はいま、4年生と池上博士(大学院専任助手)中心となり、このフィルム色素太陽電池を授業時間で作れるくらいに簡略化するプロジェクトを進めています。この試みは、昨年の12月に私の東京大学の授業で、この4月には桐蔭横浜大学で行い、成功を修めました。これは、これまでのシリコン太陽電池ではまったくできなかったことです(1400℃という高温と真空が必要です)。色素太陽電池は大気中で作れるただ1つの太陽電池です。印刷のように半導体ナノ粒子を塗りつけて、色素で染色し、最後に電解液を注入してできあがりです。

ナノ粒子を塗った電極は光を透過して不思議な色を呈します。ナノの世界を手にとって自分の素子を作れるという経験、これは科学の本当の面白さに触れる瞬間です。いよいよこのキットを桐蔭高校の皆さんにも提供します。この技術に興味のある方は、色素増感太陽電池ホームページをWeb検索で出して、メニューから不定期日記を開いてみてください。


DNAセンサーや光による治療まで

実は、色素増感は、写真から出た言葉です。写真の感度を上げる、すなわち増感です。カラー写真のしくみは、三色それぞれに感じる色素が銀塩の粒子の上で光に反応し、画像を形成します。ということは、ここで色素は光のセンサーとして役立っているわけです。このセンシングは、バイオ・医療においても活躍の舞台です。DNAのセンシング(検出)はそのトップにあります。

本学では、医用工学部西村教授(ベンチャー、青葉ジェネティクスを設立)がDNA解析研究の最先端にいますが。われわれは、西村教授と共同で色素増感を使ったDNAセンサを開発してきました。わずか10−12個のDNA分子を、光と電極を使って検出するユニークな方法です。また、川島教授徳岡准教授との共同では、色素増感ナノ粒子を使った光治療の研究も行ってきました(光線力学的治療法)。これは今はやりの若返り治療にもつながるテーマです。

太陽電池を含めて、医用工学が目指す研究は、豊かな生活(Quality of life)の実現という共通語でくくられます。ハイテクと叫ばれた時代がいまや飽和する中で、この分野は着実に成長すると信じています。


大学は1つの通過点、めざすは仕事との出会い

さいごに、高校生へのメッセージ。名門大学は出ても職場に入ると「隣はどこを出た人ぞ」というのが現実です。仕事の評価は職場での実績のみです。一度社会に出た人は苦い思いでそう気づいているに違いありません。大学は良き仕事と出会う通過点ですが、授業の単位をとるだけの通過では、出会いの接点は何も生まれません。大学での経験は、将来の進路決定とスキルアップにとって大切なヒントを得る最後の(就職前の)チャンスです。4年、6年という大学生活ではいろいろな考え・価値観が生まれては消えるでしょう。

この私自身も、大学では化学から、建築へ転科することを迷い、それがきっかけで大学院では光エネルギーに進み、そして企業から大学に転職してきました。これらの紆余曲折の苦労・経験が、自分の仕事には実に活きています。また、これからの時代は、こういった経験こそが、仕事のフォーカスを決めるエネルギー源になると考えます。この実務経験のスタートはもちろん、受験ではありません。受験を終えたあとに、自分を置く大学生活や卒業研究です。

文系、理系、何の分野であれ、夢を持って仕事する教員の身近に接しながら、計画作りから評価まで時間を共有できるような経験のできる大学、そのような環境のなかに自分を置いてみてください。

幸い、桐蔭横浜大学はそれができる大学です。


関連ページ

Copyright © Toin University of Yokohama. All rights reserved.